虹いろ探偵団32 エイドとの衝突

エイドとの衝突

10月も終わろうとしている秋晴れの午後、メリルとマリアとジョージがやってきた。

ソファに腰掛けるなりマリアが言った。

「家族の団結ってこんなに難しいのね」

「どうしたの?まだジョージにわだかまりが残っているの?」

と、私はマリアに訊いた。

「いいえ、ジョージパパのことはもう解決済み。そりゃ、心の中ではまだもやもやとした気持ちが残っていないわけじゃないけれど、今はそのもやもやした自分の気持ちに振り回されちゃいけないってことがわかっているから大丈夫。だから、ジョージパパのことはもういいの」

と、マリアが言った。

「じゃ、どうしたって言うの?」

と、私はふたたび訊いた。

「もっぱら今は、いかに自分の心が強情でわからず屋だったかってことを思い知って、そっちに意気消沈している状態。今度はエイドとやり合っちゃった……」

と、マリアは肩を落として言った。

マリアは、やはり家族の団結にはエイドも欠かせないと思った。エイドの命を救うためには、当のエイド自身が家族の、親族の業を知らねばならないだろうと思った。それで、久しぶりに兄妹で会ったというのだ。まず話のとっかかりを作るために、マリアは叔父や祖父に会いに行った話をした。すると、エイドが不審さを露わにして、どうして急に会いに行く気になったんだ、とマリアに訊いた。今まであんなに嫌っていた親族に何故会いに行く気になったんだと。マリアは、ハリスやロイやジミーの話をエイドに語った。そして、今こそ家族の団結が必要だとエイドに言った。

「それで、エイドは何と言ったの?」

と、私は訊いた。

「そしたら、エイドがそんな話は俺には関係ない。ハリス叔父さんですらろくに知らないのに、ロイやジミーって一体誰だよって。そんな話なら俺は帰るって。俺は今、大事な試験を控えていてそれどころじゃないんだって」

と、マリアが言った。

「それで私、腹が立っちゃって言っちゃったの。なによ、その言い方、仮にも血の繋がった親族なのよって。エイドが次の番かも知れないのよって」

と、マリアが言った。

「そう。それでエイドは何と言ったの?」

と、私は訊いた。マリアが続けた。

するとエイドは、マリアまでそんな非現実的なことを言い出すのか、と言った。そして、あれは心配症の母メリルの妄想だと言い出した。挙句の果てに、母メリルに会ってそんな妄想を吹き込まれてくるくらいなら、当分は母には合わないほうがいいだろうとエイドは言った。

「私、それを聞いて、どこかで聞いたような台詞ねって思ったの。そう、思い出したって。お祖父ちゃんが言ったのよ、メリルに吹き込まれたのかって。そして、叔父さんに言ったのよ。メリルは気が狂っている、だから、メリルとはもう会うなって。エイドも同じことを言っているって、私ぞっとしたわ」

と、マリアが言った。そして、続けた。

マリアは、まさにそのエイドの言い草自体が、親族一同の業なんだとエイドに言った。そこを見つめていかないかぎり長男の死の連鎖は断ち切れないのだと。次はエイドの番なんだと。すると、エイドが言った。その業とやらで死ぬなら死んだっていい。俺は俺の力でその業とやらをねじ伏せてみせる、と。だから、家族の団結など糞くらえだと。

「だから、私、エイドの馬鹿ー!って叫んで、帰ってきちゃったの」

と、マリアは半分泣き顔のようになって言った。そして、

「家族の団結が必要な時に、エイドと衝突しちゃってごめんね」

と、付け加えた。

「マリア、謝らなくていいのよ、あなたのせいじゃないわ」

と、メリルが言った。

「ここまでくると、客観視しやすいわね。繰り返されるパターンが」

と、私が言った。

「本当ですね。みんな同じことを言い合って、同じ思いに振り回されて、同じ過ちを繰り返しているなんて…」

と、メリルが言った。

「私ね、今回この長男たちのことを聞かされるまで、ママとエイド、そして今はジョージパパも含めて、うちのグリーン家はとても仲の良い家族だって思ってたの。友達にだって自慢をしていたくらいよ。でもね、今回のことで考えさせられたわ。大事な時に、いとも簡単に心がバラバラになっちゃって団結が出来ないんじゃ意味ないじゃないって。私、家族の団結がこんなにも難しいなんて思ってもみなかったわ」

と、マリアが言った。

「そうねえ、平和的に取り繕っている家族はごまんといるでしょうけれど」

と、私が言った。

「しかし、エイドの態度が気に入らないね。メリルやマリアの気持ちも知らないで」

と、黒猫が忌々し気に煙草をふかした。

「私、エイドの言葉で自分の姿をみた気がしたわ。私も、ついこの間までエイドと同じことを言っていた身だから。だから、エイドの気持ちも理解できるし、偉そうなことは言えないんだけど。それにしても、エイドがあんなにわからず屋だったなんて」

と、マリアが言った。

「やっぱり、兄妹そっくりだ」

と、黒猫が言うと、マリアがぷいと拗ねた顔をした。

「私も若い頃はエイドと同じく、自分の力で人生がなんとかなるって思っていましたから。まさか、この世界には抗いようもない力があることも気づかずに」

と、メリルが言った。

「エイドもこの場に連れて来れればいいんだけど…。私は、こうして間借りのジミーやジョージパパの分身、という存在を知っているから理解出来るんだけど…。エイドはその存在さえ知らないものだから、仕方がないのかも…」

と、マリアが言った。

「そうね、でも今は無理ね。エイドは、学校の試験に追われてそれどころじゃないでしょうし、何より、今はマリアともママとも距離を置くつもりでしょうから」

と、メリルが言った。

「それなら、私が何とかエイドとのパイプ役になってみます。うまくいくかどうか自信はありませんが、長男たちの話は知らないことにして」

と、それまで黙って聞いていたジョージが言った。

「ジョージ、そうしてくれると助かるわ。エイドの様子も把握しておきたいし」

と、メリルが言うと、ジョージパパ有り難う!とマリアが言った。

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