虹いろ探偵団38 思い出の潮の渦 

思い出の潮の渦

その日は、晴天だった。メリルとジョージとマリアは車を走らせた。ジョージの故郷に行くために、ハイウェイの長い橋を渡って海をふたつも越えて。マリアにとってはジョージの母に会うのははじめてのことだ。勿論、こうしてハイウェイ越しに眼下にひろがる海を見ることも。

「凄いわね、ジョージパパって海をふたつも渡って故郷から出てきたのね。それにハイウェイから見渡す海がこんなにも綺麗で力強いなんて。ここは潮の流れがはやいの?波が渦を巻いているわよ!」

と、マリアが感嘆の声をあげた。

「ママもはじめてジョージの故郷に行った時、ここからこの潮の渦を見て感動したわ」

と、メリルが言った。

「ここは、この潮の渦が巻くことで昔から有名なんだよ」

と、ジョージが言った。

「そうなんだ。ジョージパパ、早くそれを言ってくれなきゃ。そうしたら、この潮の渦見たさにもっと早くジョージパパの故郷に来る気になっていたかも知れないのに」

と、マリアが言った。

「いや確か、はじめてメリルと故郷に帰る時、マリアやエイドにも知ってもらったほうがいいんじゃないかと思って誘ったはずだよ。その時、この潮の渦の話もしたはずなんだけど」

と、ジョージがマリアに言った。

「そうよね、だけどマリアもエイドも来なかったのよね」

と、メリルが言った。

「えっ、そうだっけ?そんなこと覚えちゃいないわ」

と、マリアが言ってのけた。

メリルは内心、よく言うわ、とマリアに呆れた。ジョージもおそらく。

しかしそんなマリアの勝手な言い草も、きらきらと光る海と舞い上がる白い波、そして眼下に広がる潮の渦という絶景がすぐに流しさっていった。

平日で車が混んでいなかったため予定より早くハイウェイを下りた。ジョージの母とは昼にホテルのレストランで会うことになっていたが、約束の時間までまだ一時間ばかりあった。メリルとジョージとマリアはそこから車で20分程のグリーン家の墓に行くことにした。グリーン家の墓は川沿いに市街から少し離れたところにあった。車を停めて、そこから木々に覆われた墓地にむかった。

「ここだよ。ここに親父とトムが眠っているんだ」

と、ジョージがマリアに言った。

「ふうーん、じゃジョージパパのお父さんとははじめての対面だから改めて挨拶しなきゃね」

と、言ってマリアが墓にむかって、よっ、ジョージパパのお父さん、と軽く手をあげた。

メリルもジョージも笑った。そして、

「なんだこの跳ねっ返り娘はって、ジョージのお父さんがびっくりしているわよ」

と、メリルが言った。

「誰か来てくれたのかな、花がまだ新しい」

と、ジョージが言った。ほんとね、とメリルも相槌を打った。

「父や兄のために来てくれるとしたら、叔母さんしか思い当たらないけど」

と、ジョージが言った。

メリルとジョージとマリアは、墓石の汚れを掃除し、きれいな水を流して周辺を清め、線香をたいて手をあわせた。

「親父にマリアを紹介できて良かったよ」

と、ジョージが言った。

「次はエイドを連れて来なくちゃね」

と、マリアが言った。

メリルとジョージとマリアは墓地をあとにして、ジョージの母と会うために約束のホテルに向かった。ホテルの駐車場に入ると、ジョージの母が先に車を停めて待っていた。

「お母さん、お久しぶりです」

と、ジョージが挨拶をした。

「お母さん、今日は娘のマリアも一緒に来ました」

と、メリルが言ってマリアを紹介した。

ジョージの母がマリアに、はじめまして、と笑顔で言った。マリアもにっこり笑って、はじめましてと応じた。ジョージの母は、ゆったりと過ごすことのできる個室を予約してくれていた。

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